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第三十五話 理玖side 祝福の仮面

Author: 白蛇
last update publish date: 2026-08-16 17:02:23

 理玖りくが『Kurose Web Security』本社へ戻ると、秘書室の空気はいつもよりわずかに張り詰めていた。

「社長、応接室にお通ししています」

 高遠希美のぞみの声はいつも通り淡々としていたが、その目だけがわずかに険しい。

「名前は」

「堂島電気株式会社、堂島尊たける様です」

 ――堂島。

 どこかで聞いた名だと、理玖は思った。

 だが、その記憶は雨音の向こうに沈んだように、すぐには形を結ばなかった。

――それよりも、だ。

 堂島電気の次期社長候補が、このタイミングでわざわざ足を運んできた。

――ただの祝辞で済むはずがない。

「……敵情視察、か」

 理玖の言葉に、普段から冷静さを崩さない希美がぴくりと眉を動かした。

「その側面もあるでしょう」

 希美が声を抑えて言った。

「構わない。向こうがその気なら、相手をするだけだ」

 理玖はネクタイを正し
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